斜線堂有紀を読むならこの3冊｜夏の終わりに君が死ねば完璧だったから／恋に至る病／私が大好きな小説家を殺すまで

2025年10月1日2025年10月11日

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斜線堂有紀は、やさしさや“好き”がどこで別のかたちに反転するかを静かに見せる作家。
この3冊では、夏のきらめきと約束の重さ、恋と支配の境界、作家と読者の距離がそれぞれの切り口でせまってくる。読み終えるたびに、登場人物の“選んだ一歩”が胸に残るはず。

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終わりの気配が胸に残る『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』

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あらすじ：片田舎で将来に希望を持てない少年・江都日向の前に、身体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患う女子大生・都村弥子が現れる。彼女は「自分の死体は3億円で売れる。その相続人になってほしい」と日向に持ちかける。条件は、彼女が好む古い盤上ゲームチェッカーに付き合うこと。二人は施設（サナトリウム）で時々会い、駒を打ちながら距離を縮めていくが、やがて“死後の大金”という現実が、周囲と二人の関係に歪みを生み始める。壁に描かれた52Hzの鯨、盤面に込めた祈り、互いの秘密——夏が終わるまでに、日向は誰のどんな未来を選ぶのか。

こんな人に：

青春のまぶしさと死の選択が交差する物語に惹かれる
取り引きや約束が生む倫理の揺れを読みたい
小さなモチーフ（盤上ゲーム／ノートの落書き／“鯨”）が意味を帯びていく過程が好き

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心のもつれを解き明かす『恋に至る病』

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あらすじ：語り手の少年・宮嶺には、誰からも好かれる幼なじみの恋人・寄河景がいる。だがある時期から、彼女の周囲で自殺を誘発する匿名ゲーム「青い蝶」が広がり、やがて全国的な事件へと発展する。宮嶺は、彼女が“いつ”“どうやって”変わっていったのか、そして最初の殺人に何が起きたのかを遡って語る。表向きは無邪気で善良な少女、しかし選び取ってきた行動はどこへ向かっていたのか。恋と加担、信頼と盲信が重なり、二人の関係は後戻りできない地点へ。読者は、愛情の名のもとに積み重ねられた選択の行き着く先を見届けることになる。

こんな人に：

恋愛の依存／支配を真正面から読みたい
語りの小さな違和感から真相に近づく物語が好き
SNSや匿名ゲームの伝播が怖いと感じる

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執着が物語を駆動する『私が大好きな小説家を殺すまで』

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あらすじ：人気小説家・遥川悠真が失踪した。物語は、彼の小説に救われ、偶然命も救われた少女・幕居梓の視点で進む。ふたりはやがて奇妙な共生関係を結び、梓は遥川の創作を支える存在になる。だが、遥川が書けなくなることで均衡は崩れ、梓は彼を救うためにゴーストライターとして筆を執る決断をする。尊敬と献身、依存と支配が入り混じる中で、創作の名のもとに越えてはならない線がにじむ。なぜ梓は最愛の小説家を“殺す”に至ったのか——その理由が最後に明かされる。

こんな人に：

推し×クリエイターの距離感に関心がある
共依存／献身／ゴーストライティングの線引きを読みたい
作家と作品、物語と現実の境目が揺れる話が好き

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まとめ

共通する読み味：どれも「誰かの選択」が物語を決定づける。優しさや“好き”の形が、別の誰かを縛る／救うのかが焦点。
違いの軸：
- 『夏の終わりに——』は青春×死とお金の取引。
- 『恋に至る病』は恋の名を借りた支配。
- 『私が大好きな——』は推しと作家、創作の線引き。
最初の一冊：物語に入る敷居の低さで選ぶなら『夏の終わりに——』。刺さるテーマで深くいくなら、恋愛の境界に迫る『恋に至る病』、創作と崇拝の危うさを見たいなら『私が大好きな——』へ。