2025年10月のKindleの読み放題プラン対象から、人気作家・受賞作・映像化・話題作を軸に“まず外さない”10冊を選びました。読み放題の対象は入れ替わるため、ご利用前に各商品のページで「Kindle Unlimited」の表示があるかを確認してください。※本記事のAmazonリンクにはアソシエイトリンクを含みます。
ザ・ロイヤルファミリー(早見 和真)
競馬に生きる一家の二十年。血統、資金、怪我、天候、そして“運”——勝負は神話だけで回らない。勝てない日の台所と厩舎の匂いまで描き込み、家族というチームの強さと脆さを最後まで誤魔化さない。栄光の表裏にある持久走の物語。
こんな人におすすめ:競馬の現場と家族の時間をじっくり味わいたい。
一行レビュー:負けた日の描写がこんなに沁みるとは。
盤上の向日葵(柚月 裕子)
山中の白骨遺体と、伝説級の将棋駒。現在の捜査線と、孤独な天才が将棋にすべてを賭けた過去線が、離れたまま回転し、少しずつ噛み合い始める。勝ち負けの外に置かれがちな“生活の音”が濃く、棋士の矜持や家族の影が駒の一手の重みを変える。上巻では全貌は見せないが、選択の代償が未来に投げる影ははっきりする。ページを閉じても頭の中で盤面が続く一冊。
こんな人におすすめ:骨太ドラマ×ミステリでじっくり。秋の夜長の長編を探している。
一行レビュー:静かに熱い——“次の一手”が怖い。
※上巻のみKindle Unlimited対象です(2025/10/03時点)
総理の夫 First Gentleman 新版(原田 マハ)
“日本初の女性総理”になった妻と、生真面目な鳥類学者の夫。権力のまわりには熱も冷気もあるが、語り口はあくまで生活の手触りに忠実だ。公と私の境目、支えるという行為の形を、軽やかで誠実な会話が何度も更新する。政治劇の派手さよりも、二人の距離の再調整が胸に残る。
こんな人におすすめ:前向きな読後感がほしい/“支える物語”が読みたい。
一行レビュー:やさしい芯の強さに背中を押される。
蜘蛛の牢より落つるもの(原 浩)
水底に沈んだ集落と比丘尼伝承。取材者の手帳に溜まる断片と、住人の“言い方”の癖が、地図の正しさと現実の手触りを少しずつ食い違わせる。音、湿気、足場の悪さ——五感に来る恐怖の末に、語りが現実を上書きしていく気配が濃くなる。ラストの“落ち”は静かだが冷たい。
こんな人におすすめ:土地×伝承の“湿った怖さ”が好き。夜読推奨だけど寝付きは保証しない。
一行レビュー:床下から軋む音がしばらく苦手になった。
お前の彼女は二階で茹で死に(白井智之)
挑発的な題名に反して、核は“言葉の置き方”と“構造”。連作短編の各事件は、特殊設定の毒気とロジックの冷たさが共存する。読者が無意識に補う常識や視界のフレームを、するりとずらす手際が小気味よい。刺激強めの場面もあるが、残るのは“読み方を揺さぶられた感覚”。
こんな人におすすめ:変化球の本格/叙述の罠にワクワクする。
一行レビュー:タイトルで笑って、本文で固まる。
微笑む人(貫井 徳郎)
穏やかな微笑みは、必ずしも善良の証ではない。平穏の皮膜がはがれていく日常と、社会の視線が加速的に意味を付与していく過程が、じわじわと怖い。犯行や動機の一点突破でなく、人間の“納得”の危うさを描く心理×社会派。読み終えると、笑顔の裏側にある沈黙を考えてしまう。
こんな人におすすめ:静かな不穏、社会派のえぐみをじわりと味わいたい。
一行レビュー:にこやかさが、いちばん怖いときがある。
かわいそ笑(梨)
「死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目でしょう。」
一度読んだら引き返せない、怪異が侵食する恐怖のネット怪談。ネットの断片、会話ログ、写真。バラバラの素材がゆっくり一つの物語に収束する過程で、“かわいそう”という言葉の両義性が容赦なく露わになる。善意のつもりの笑いが、誰かの生活を静かに傷つける。短いのに後味が長い、夜に効く短編集。
こんな人におすすめ:SNS時代の“言葉の重さ”に敏感な人。短編でズシンと来たい。
一行レビュー:“かわいそ”って二度と軽く言えない。
青春テロリズム(朱宮あめ)
文化祭前の学校に、告発とも挑発ともつかない“仕掛け”。匿名の声が善意と義憤と好奇をかき混ぜ、教室の座標を少しずつずらしていく。爆発は要らない。言葉と視線だけで秩序は崩れる。拙い正義感と承認欲求の行方を、登場人物たちのささやかな選択で追う群像劇。
こんな人におすすめ:学園の集団心理が揺れる瞬間を読みたい。
一行レビュー:あの“空気の色の変化”、知ってる。
紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃(歌田 年)
紙の“質感”が真相を指し示すシリーズ第2作。繊維、滲み、焼け、刻印——指先で読む手がかりが、人物の語りより雄弁だ。前作と同様に、職能のディテールがロジックの駆動源になり、現場の空気を吸い込むように推理が進む。観念ではなく、物が語るミステリ。
こんな人におすすめ:職業×本格の掛け算が好き。手触りのあるロジックに浸りたい。
一行レビュー:紙が証言台に立つ、って最高のコンセプト。
※1作目もKindle Unlimited対象です(2025/10時点)
殺意の正典(永山 千紗)
新興宗教の“開祖生誕会”で起きた連続毒殺。“正しさ”の名で行使される暴力は、いつどこで正当化されるのか。ルールや言葉の枠組みが、行為の意味を変えてしまう危うさを、ミステリの形式で照らし出す。結論の爽快感より、価値観が少し揺れる読後を重視した一冊。
こんな人におすすめ:倫理に踏み込むタイプのミステリが好き。読後に考え続けたい。
一行レビュー:正義の定義、今日だけでも書き換わった。
追加+10作!|タイプ別ミステリ
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本格(密室・館)
- 密室黄金時代の殺人(鴨崎暖炉) — 雪の館×多重トリック
- 風神館の殺人(石持浅海) — “館”×ロジックの端正さ
学園・青春
- 体育館の殺人(青崎有吾) — 学園×密室の王道開幕
- 神のロジック 次は誰の番ですか?(西澤保彦) — 学園×多重トリック
舞台ギミック(廃墟・吹雪)
- 廃遊園地の殺人(斜線堂有紀) — 廃墟ギミック本格
- ホワイトバグ 生存不能(安生 正) — 吹雪×パニック・ミステリ
心理・社会派
- 木曜組曲(恩田陸) — 閉鎖空間の心理戦
- 甘美なる誘拐(平居紀一) — 群像が収束する快感
刺激強め
- 少女たちは夜歩く(宇佐美まこと) — 学校と怪異のはざま
- 公開処刑人 森のくまさん(堀内公太郎) — ネット私刑(※残酷描写あり)
※Kindle Unlimitedは入れ替わります。読む前に各作品ページの最新表示をご確認ください。本記事にはアフィリエイトを含みます。
おまけ:比嘉姉妹シリーズ(澤村伊智)
『ぼぎわんが、来る』/『ずうのめ人形』/『などらきの首』/『ししりばの家』/『ぜんしゅの跫』/『さえづちの眼』 …ホラー×民俗×どんでん返しの快感。シリーズで読了満足度が高いです。
2025/10時点で1~6巻まで読み放題対象です。
Kindle Unlimited対象について
紹介した作品は投稿日時点で読み放題対象ですが、対象作品は定期的に変更されます。ご利用前にAmazonの商品ページで最新の対象状況をご確認ください。また、読みたい作品があれば早めに読むか、ライブラリに追加しておくと安心です。
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