ホワイトバグ 生存不能/安生 正

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ホワイトバグ 生存不能 安生 正-アイキャッチ

猛吹雪が去った跡に残る、説明不能の大量死という不条理。科学と仮説で迫るパニック×サバイバル×ミステリの融合作

目次

はじめに

今日は、安生正『ホワイトバグ 生存不能』。舞台は極寒の山岳地帯と極地。猛烈なブリザードの通過後に積み上がる死体、現場に残るわずかな痕跡、そして“現象”の正体に近づくための仮説運用。ページをめくる手が止まらないタイプの危機管理エンタメ。アフガニスタンと中国の国境地帯・ワフジール峠での全滅事件、グリーンランドでの類似事案という並行線から始まる大規模事案の予兆。

あらすじ

ホワイトバグ 生存不能 (宝島社文庫)

Kindle Unlimited
対象(2025/10時点)

ワフジール峠で中国の国境警備隊が壊滅。ほどなく、日本の気象観測隊とも連絡途絶。プロ登山家・甲斐が救出協力を要請され、研究者チームと現地入り。現場は暴風雪の通過後にのみ発現する“何か”。低温障害では説明できない損傷、統計的に異常な発生パターン、グリーンランドでの目撃証言。仮説を立て、装備を更新し、危険域に踏み込む救出作戦。異常気象未知の脅威の交点に横たわる“ホワイトバグ”の本質へ向かう捜索行。推進力は、観測データ、風向、地形、遺留物の読解。結末に至るまで加速する検証とカウントダウン。

こんな人におすすめ

  • 異常気象×未知の脅威という設定にワクワクする人
  • ロジックで現象を追い詰める検証型サスペンスが好物の人
  • 極地サバイバルや山岳描写のリアリティを求める人

読みどころ

1) 科学寄りの仮説運用

気温・風速・降雪粒径、気流の剪断、装備の耐性。各章で提示される“現象側の条件”と“人間側の対策”のアップデート。理屈抜きの怪異ではなく、科学で食い下がるスタイルが読み味の芯。

2) 極地サバイバルの臨場感

雪稜、ホワイトアウト、滑落リスク、撤退判断。登山・救助のプロトコルが筋道となり、アクションだけに寄らない現実感。ルート工作や撤収判断の描写が緊張の持続装置。

3) パニックとミステリの両立

“なぜ死ぬのか”というメカニズム解明が、次の作戦計画に直結。状況再現→仮説修正→再挑戦のサイクル。いわば手がかり重視型の災害ミステリという構造。

4) テーマの後味

人間の営みを易々と越境する自然現象、情報が恐怖を増幅する連鎖、対策の倫理。キャラクターの覚悟に滲む“職能の矜持”。読み終えた後に残るのは、恐怖よりも判断の物差し。

ミニガイド

  • 著者:安生 正。『生存者ゼロ』を皮切りに危機管理・パニック系で知られる作家。単行本は2021年、文庫は2023年刊行
  • レーベル:宝島社文庫『このミス』大賞シリーズ。腰帯コメントに小島秀夫・村上貴史の推薦文が載るエンタメ路線
  • 関連作の入口:近接トーンの既刊として『生存者ゼロ』『ゼロの迎撃』。同系の“科学で殴るパニック”が肌に合うなら好相性

感想

未知の現象に対して、観測と仮説で一歩ずつ詰めていく運びがとても好みでした。装備や手順を更新しながら危険域に入る判断、現場の温度感、チーム内の役割分担まで描かれていて、行動の理由がわかりやすいです。恐怖を大きく見せるより、まず事実を積む姿勢が芯になっているので、物語の重さが無理なく伝わってきます。

検証→修正→再挑戦のサイクルがはっきりしていて、読みながら自分も「次はこう試すはず」と考えたくなりました。種明かしに向かう過程も、ご都合主義に寄らず、これまでの観測や状況説明と噛み合っています。結末は派手な驚きより納得が先に立ち、読み終えてからも “あの条件なら同じ結果になる” と頭の中で再現できる感じが気持ちよかったです。

読後は、異常事態そのものよりも、情報の不足や判断の遅れが恐怖を増幅させることをあらためて意識しました。災害や極地ものが好きな方はもちろん、検証型のサスペンスを探している方にも安心してすすめられる一冊です。

データ・読みやすさ

  • 版元:宝島社/文庫版は432ページ規模。中長編の読み応え
  • 文体:専門語は要点説明が入り、詰まりにくい
  • 速度感:短い場面転換の連続。一晩読破も〇

(2025/10時点)Kindle Unlimited 対象。対象は入れ替わります。読む前に作品ページで最新表示をご確認ください。
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