『強欲な羊』(美輪和音)— やさしさの顔をした“支配”、どこで気づく?

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やさしさや善意のはずなのに、読んでいるうちに少しずつ息苦しくなっていく。

『強欲な羊』は、人間関係の中にある支配や依存、嫉妬の歪みを描いた連作短編集です。派手なホラーではないのに、静かに心を削ってくるような怖さがありました。

目次

あらすじ

『強欲な羊』は、人の欲や嫉妬、支配と依存を描いた連作短編集です。

表題作「強欲な羊」では、美しい姉妹の家に同居することになった“わたくし”の視点から、少しずつ歪んでいく関係が語られます。最初は小さな違和感に見えたものが、やがて取り返しのつかない結末へつながっていく――その語り口に引き込まれる一編です。

そのほかにも、暴力の影から逃れようとする女性、孤独への恐れから誰かを監視してしまう人、支配と依存のあいだで揺れる関係など、5つの物語が収録されています。

共通しているのは、やさしさや善意の顔をした“欲”の怖さ。
静かな文章で進んでいくのに、読み終えるころには人間関係の歪みがじわっと残る一冊です。

こんな人におすすめ:

  • 後味が甘くない心理サスペンスを読みたい
  • 支配、依存、嫉妬が絡む人間関係に惹かれる
  • 一人称の語りに違和感を覚えながら読む作品が好き
  • 派手な事件より、静かに歪んでいく怖さを味わいたい
  • 短編でもしっかり余韻が残る小説を読みたい
著:美輪 和音
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読みどころ

『強欲な羊』の読みどころは、語り手の言葉をどこまで信じていいのか、読みながら少しずつ揺さぶられていくところです。

最初は普通の説明に見えていた言葉が、読み進めるうちに違う意味を持ちはじめる。誰が本当のことを言っているのか、誰が何を隠しているのかを考えながら読む面白さがあります。

また、5つの短編に共通しているのは、人間関係の中にある支配や依存の怖さです。大きな事件が派手に起こるというより、日常の中の小さな違和感が積み重なっていくタイプの怖さなので、心理描写をじっくり味わいたい人に向いています。

感想

読んでいるあいだ、欲が少しずつ形を変えていく様子が怖くて、でも目を離せませんでした。誰かの「当たり前」や「ちょっとだけ」が、蓄積して別の景色に変わっていく。その過程がはっきり描かれているので、登場人物の判断がどこでズレたのか、自分の中でも何度も振り返ることになりました。

語りに引っ張られる感じが強くて、こちらの視線まで誘導されてしまうのが巧みでした。小さな違和感がいくつも残って、読み進めるほどに並べ替えたくなる。終盤で視界が切り替わると、それまでの言葉の選び方が別の意味を帯びて見えてきて、静かな納得が残ります。

読後は、派手なカタルシスよりも、判断の重さがじわっと効くタイプの余韻でした。誰かのための善意と自分のための打算、その境い目をもう一度確かめたくなる一冊です。

データ/読みやすさ

  • 形式:連作短編集(全5編)
  • 受賞:表題作=第7回ミステリーズ!新人賞
  • 読みやすさ:中(語りの“解釈”に気づくと快感が増す)

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