“死者の日記”が、いまを侵食していく。
原浩さんの『火喰鳥を、喰う』は、太平洋戦争末期に戦死したはずの男の日記を発端に、不可解な出来事が次々と起こるホラーミステリーです。
本作は第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞の大賞受賞作。2025年には、水上恒司さん、山下美月さん、宮舘涼太さんらの出演で実写映画化されました。
この記事では、原作のあらすじと見どころ、映画化情報をネタバレなしで紹介します。
『火喰鳥を、喰う』作品情報
著者:原浩
出版社:KADOKAWA
レーベル:角川ホラー文庫
文庫版発売日:2022年11月22日
ページ数:352ページ
受賞:第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞 大賞
紙書籍と電子書籍のほか、Audibleでも配信されています。
あらすじ
信州で暮らす久喜雄司のもとに、太平洋戦争末期に戦死した大伯父・久喜貞市の日記が届く。
同じころ、久喜家の墓石が何者かに破壊され、日記に関わった人々の周囲でも不可解な出来事が続き始めていた。
貞市の日記に記されていたのは、戦場で何としてでも生き延びようとする、異様なまでの生への執着。さらに、そこには誰も書いた覚えのない文章まで現れる。
日記と相次ぐ異変には、何かつながりがあるのではないか。
雄司は妻の夕里子とともに、超常現象に詳しい北斗総一郎へ助けを求める。
しかし、謎を追うほど、現在の人間関係や確かだと思っていた現実まで、少しずつ揺らぎ始める。
『火喰鳥を、喰う』の見どころ
日記が現実を侵食していく不気味さ
本作の中心にあるのは、戦死した男が遺した一冊の日記です。
過去の記録にすぎなかったはずの文章が、少しずつ現在の出来事と結びついていく。
日記を読んだことをきっかけに異変が広がるため、登場人物だけでなく、読んでいる側まで得体の知れないものに触れてしまったような感覚になります。
怖いのは、何かが突然現れる場面より、日記の文章に混じる小さな異変です。読み進めるほど、その違和感がじわじわ大きくなっていきます。
怪異か事件か、簡単には決められない
墓石の破壊や失踪、日記に現れる謎の文章。
超常現象を思わせる出来事が続く一方で、誰かが仕組んだのではないかという疑いも消えません。
怪異と事件、そのどちらにも見えるまま話が進むため、何を信じればいいのか分からない不安が残ります。
真相に近づくほど、足元が揺らぐ
物語が進み、少しずつ謎が見えてきても、不安は消えません。
真相に近づくほど、それまで信じていた前提まで揺らいでいき、謎が解ける爽快感だけでは終わらないのです。
読み終えたあとも、「あれはどういうことだったのか」と振り返りたくなる余韻が残ります。
こんな人におすすめ
- 日記や手記など、記録を使ったホラーが好き
- 怪異と事件の境目が揺らぐ物語を読みたい
- 謎解きだけでなく、不穏な読後感も楽しみたい
- 現実が少しずつ書き換わっていく作品に惹かれる
怪異とミステリーの境目で揺さぶられる作品が好きな方は、〈あしや超常現象調査〉シリーズも相性がいいと思います。怪異をただ怖がるだけでなく、観察し、分析しながら追っていくホラーミステリーです。

民俗ホラーや怪異の気配が濃い作品をもっと読みたい方は、比嘉姉妹シリーズもおすすめです。読む順番はこちらでまとめています。

映画『火喰鳥を、喰う』情報
『火喰鳥を、喰う』は実写映画化され、2025年10月3日に公開されました。
久喜雄司を水上恒司さん、妻の夕里子を山下美月さん、超常現象に詳しい北斗総一郎を宮舘涼太さんが演じています。
監督は本木克英さん、脚本は林民夫さん。主題歌はマカロニえんぴつの「化け物」です。
原作の中心にあるのは、日記に記された言葉の不気味さと、何が現実なのか分からなくなっていく感覚。
映画では、その違和感が映像や音、俳優陣の表情によってどう表現されているのかが見どころになります。
Blu-ray・DVDも発売中
映画『火喰鳥を、喰う』のBlu-ray・DVDは、2026年4月22日に発売されました。
豪華版には、水上恒司さん、山下美月さん、宮舘涼太さんによるビジュアルコメンタリーのほか、メイキングやイベント映像などが収録されています。
映画を見逃した方や、もう一度じっくり確認したい方は、Blu-ray・DVDから楽しめます。
原作と映画はどちらから楽しむ?
日記の文章や登場人物の心理をじっくり味わいたい場合は、原作から読むのがおすすめです。
映像の緊張感や俳優陣を入り口にしたい場合は、映画から入っても問題ありません。
映画を見たあとに原作を読むと、文章だからこそ伝わる違和感や、物語の細かな組み立てを確認できます。
Audibleでも聴ける
『火喰鳥を、喰う』はAudibleでも配信されています。
ナレーターは土池悠介さん。
日記の文章や、登場人物の周囲に少しずつ異変が広がっていく展開は、音で聴くことで不穏さがより際立ちます。
移動中や作業中に楽しみたい方、文章だけでなく声による演出も味わいたい方に向いています。
まとめ
『火喰鳥を、喰う』は、戦死した男の日記をきっかけに、怪異と現実の境目が崩れていくホラーミステリーです。
怖さだけで押し切るのではなく、何が起きているのかを考えながら読み進める面白さがあります。
そして真相に近づいたあとも、すべてがすっきり収まるわけではありません。
日記や記録を使ったホラー、現実が揺らぐ物語、読後に考察したくなる作品を探している方におすすめの一冊です。

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