織部泰助さんの『死か翅の貪る家』を読みました。
因習村、館もの、探偵、怪談師。
好きな要素がそろったホラーミステリでしたが、読み終わったあとに残ったのは、想像以上にじっとりした不気味さでした。
私は前作未読のまま本作から読みましたが、これから読むなら、まずは1作目『死に髪の棲む家』から入るのがおすすめです。
この記事では、『死か翅の貪る家』を前作未読で読んだ感想を、ネタバレなしでまとめます。
『死か翅の貪る家』はどんな作品?
『死か翅の貪る家』は、織部泰助さんによる出雲秋泰シリーズ第2作です。
読み方は「しかばねのむさぼるいえ」。
舞台は、奇妙な因習が残る村。
若手作家の出雲秋泰は、“死か翅蝶”にまつわる噂をきっかけに村を訪れます。
ところが、土砂崩れによって帰り道が閉ざされ、村に閉じ込められることに。
さらに、滞在先の洋館で、口いっぱいに蝶を詰められた死体が見つかります。
これは怪異なのか、それとも人間の仕業なのか。
因習村、閉ざされた洋館、怪死事件、探偵役の作家。
ホラーとミステリの気配が濃く絡み合う、怪奇探偵小説です。
『死か翅の貪る家』感想レビュー【ネタバレなし】
とにかく、好きな要素が多すぎました。
因習村。
館もの。
探偵。
小説家。
怪談師。
怪異なのか殺人なのかわからない事件。
これだけ盛ると、普通なら散らかりそうなのに、『死か翅の貪る家』は最後まできれいにまとまっていたのがよかったです。
序盤から不穏な空気があり、村の因習も、洋館の雰囲気も、登場人物たちの癖の強さもかなり好みでした。
特に面白かったのは、殺人なのか怪異なのか、最後まで確信できないところ。
「これは人間にできるの?」と思う一方で、完全に怪異だと決めつけるにはまだ何かありそう。
その揺れがずっと続くので、ページをめくる手が止まりませんでした。
しかも、終盤の畳みかけが強いです。
ホラーとしてのぞわぞわ感がありつつ、ミステリとしての着地もある。
読み終わった直後は、「面白かった!」より先に「きもちわる……」が来ました。
でも、その嫌な残り方まで含めてかなり好きです。
蝶が苦手な人には本気でおすすめしにくいですが、因習村ホラーや怪奇ミステリが好きな人には刺さる作品だと思います。
因習や怪異の気配が濃いホラーが好きな方は、同じく不穏な空気を味わえる『ナキメサマ』シリーズガイドもあわせてどうぞ。
2作目から読んでも大丈夫?
『死か翅の貪る家』は出雲秋泰シリーズ第2作ですが、2作目から読んでも物語自体は問題なく楽しめました。
本作の事件は本作内で完結しているので、前作を読んでいないと話についていけない、というタイプではありません。
ただ、作中には前作の出来事に触れる説明がところどころ入ります。
それがまた、ただの説明ではなくて、前作への興味をかなり刺激してくるんです。
私は前作未読で読んだので、
「え、前作もめちゃくちゃ面白そう」
「読む。読むからそこまで言わないで…!」
と、何度も思いました。
大きなネタバレで読む気がなくなるというより、前作の空気や事件の気配がちらっと見えることで、逆に読みたさが増してしまう感じです。
なので、『死か翅の貪る家』から読んでも大丈夫です。
ただ、これからシリーズに入るなら、1作目『死に髪の棲む家』から読む方がより自然だと思います。
蝶が苦手な人は注意。でも因習村ホラー好きには刺さる
『死か翅の貪る家』は、タイトルどおり「蝶」の存在感がかなり強い作品です。
きれいなモチーフとしての蝶というより、ぞわぞわする不気味さや、生理的な気持ち悪さに寄った描写もあります。
私はその気味悪さも含めてかなり楽しめましたが、蝶や虫が苦手な人には少しきついかもしれません。
一方で、因習村ホラーや館もの、怪異とミステリの境目を楽しむ作品が好きな人にはかなり刺さると思います。
ただ怖いだけではなく、「これは怪異なのか、それとも人間の仕業なのか?」と最後まで引っ張ってくれるところが魅力でした。
因習村や怪異の気配が濃いホラーが好きな方は、『ナキメサマ』から始まる作家・那々木悠志郎シリーズも相性がよさそうです。閉鎖的な土地の不穏さや、怪異と人間の怖さが絡む作品を読みたい方におすすめです。
まとめ:前作未読でも面白い。でも1作目から読みたくなる
『死か翅の貪る家』は、前作未読でもしっかり楽しめるホラーミステリでした。
因習村、館もの、探偵、怪談師、怪異か殺人かわからない事件。
好きな要素が詰まっているのに、最後まできれいにまとまっていて、読み終わったあともしっかり満足感があります。
ただ、前作に関する説明も出てくるため、これから読むなら1作目『死に髪の棲む家』から読むのがおすすめです。
私は2作目から読んでもかなり楽しめましたが、読みながら何度も「先に1作目を読めばよかった」と思いました。
ホラーとミステリの境目で揺さぶられたい人、因習村や館ものが好きな人には、ぜひチェックしてほしい一冊です。


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