7月・8月は、合わせて18冊を読みました。
新刊を発売前に読ませてもらう機会も多く、気になっていた既刊にも手を伸ばせて、振り返ってみるとかなり当たりの多い2か月。
今回はその中から、特に読んでよかった10作品を紹介します。
★5をつけた作品を中心に、「★5でもいいくらい面白かったけれど、期待値が高かったぶんほんの少し届かなかった」という★4.5の作品も2冊選びました。
ランキングではありません。すべてネタバレなしで紹介します。
- 評価はあくまで個人的な読後感です。
『「石球城」殺人事件』北山猛邦|★5
この夏どころか、今のところ2026年No.1。
凍てつく世界を旅する少年・ルーサが迷い込んだ「石球城」。永遠に夜が明けない城塞都市を舞台に、13の密室と連続する事件の謎が描かれます。
これは本当に好きでした。
13の密室というだけでもワクワクするのに、それだけでは終わらない圧倒的な世界観。
本格ミステリーとして謎を追う面白さがありながら、物語そのものにもどんどん引き込まれていきました。
読み終わったときには「今年これを超える作品に出会えるかな」と思ったくらい。
ミステリーとしての驚きだけではなく、ひとつの物語を読み切った満足感まで大きかった作品です。
『少年ABCの完璧な選択』結城真一郎|★5
中学2年生だった少年たちは、幼馴染を救うために殺人を犯し、法の死角を突いて無罪放免に。
それから15年後、幼馴染が何者かに誘拐され、「真犯人が名乗り出なければ殺す」と宣告されます。
完全犯罪と友情を組み合わせた設定から、もう面白い。
過去に自分たちがしたことと、現在突きつけられた究極の選択。
誰を信じるのか、どこまで信じられるのか。
ミステリーとして真相を追いながら、人間関係がどう転んでいくのかも気になって、最後まで一気に読めました。
結城真一郎さんらしい「この先どうなるの?」が続く作品で、今年の新刊の中でも特に印象に残っています。
『殺し屋の出世術』野宮有|★5
前作『殺し屋の営業術』に続くシリーズ第2作。
敵が強すぎて、「これもう無理じゃん……」と思うほど絶望的な状況が続きます。それでも、前作同様に営業スキルと圧倒的な頭脳が効いてくる終盤は爽快で、興奮が止まりませんでした。
絶望が深いぶん、形勢が動き始めてからの高揚感も大きく、先が気になってどんどん読まされます。
残酷な描写には思わず目を背けたくなる場面もありましたが、それ以上に続きへの興味が勝り、読む手は止まりません。敵の容赦のなさが、追い詰められていく恐怖と絶望感をさらに強めていました。
殺し屋たちそれぞれの成長だけでなく、チームとして連携していく姿も見応えあり。
まだまだ続きがありそうなので、次作も楽しみにしています。
『かわりに嘘』鈴木七月|★5
極度の心配性で、700件もの心配事をスマホに記録している大学生・夏目。
祖母を亡くした彼女が身を寄せたのは、何を聞いても嘘ばかりのおば・ひかりが暮らす錦C町でした。
この夏、いちばん予想外の方向からハマった一冊かもしれません。
私はもともと大きな事件が起こる物語を好んで読むのですが、『かわりに嘘』で特に面白かったのは、錦C町に暮らす一癖も二癖もある人たちと、その真ん中で淡々と心配事を増やしていく夏目。
人生で初めて聞くような言葉や発想が次々に飛び出してきて、何度も笑ってしまいました。
にぎやかな人物たちの掛け合いを楽しみながら、開かずの扉やひかりの過去もしっかり気になる。
何げない日常を描く小説って、こんなに面白いんだ。
そう思わせてくれた作品です。
『嘘つきは人間のはじまり』真梨幸子|★5
さまざまな詐欺を題材にした8編の短編集。
各話の冒頭で詐欺の種類が紹介されるので、「次はどんな手口なんだろう」と自然に期待が高まります。詐欺師の巧妙さだけでなく、騙される側の心理や、その先に待つ末路まで描かれていてかなり恐ろしい。
表題作の地面師の話で一気に引き込まれ、2作目のロマンス詐欺で完全に夢中になりました。
各話はまったく違う詐欺を扱っているのに、少しずつつながっている部分もあって、読み終えるともう一度確かめたくなる構成も好み。
「こんなにも多くの詐欺があるのか」と驚かされる一方で、物語としてもしっかり面白く、一気読みでした。
『楽園』夕木春央|★4.5
「誰か一人を殺さなければ脱出できない」という条件を突きつけられた男女を描く、夕木春央さんの本格ミステリー。
設定にはかなり惹かれたものの、状況が明らかになってからは少し現実離れして感じてしまい、前半〜中盤は思ったほど入り込めませんでした。極限状態のわりにハラハラする場面も少なく、展開を少し長く感じたところもあります。
ところが、物語が動き始めてから一気に加速。
何が起きたのか、どうやって成し遂げたのかが気になって読む手が止まらなくなり、伏線がつながっていく終盤には、それまで感じていた物足りなさが吹き飛ぶほどの衝撃がありました。
『方舟』『十戒』を読んできたからこそ味わえる興奮もあり、シリーズを追っている方にはぜひ読んでほしい一冊です。
『シュレディンガーの密室』麻根重次|★4.5
土砂崩れで孤立した研究所、硫化水素が充満する空間、そして殺人事件。
密室の扉を開けるか否かによって、二人の生死が決まるという「究極の選択」が物語の軸になります。
読み始めてまず頭に浮かんだのが、霧と有毒ガスに閉ざされた病院を描く『白魔の檻』でした。設定や状況にどこか近いものを感じながら読み進めました。
かなり緊迫感があるはずの状況なのに、前半は登場人物たちがなんとなくダラダラ過ごしているように感じてしまい、思っていたほど切迫感には入り込めず。
ところが、後半に入ってからどんどん面白くなります。
真相に近づいたと思ったらまたひっくり返され、二転、三転。良い意味でかなり振り回されて、最後の最後まで驚かされました。
読後感も好みで、結果的には「読んでよかった」と思えた一冊。ただ、タイトルとあらすじを見た時点で期待値が上がりすぎていたこともあり、評価は★4.5です。
『ハウスメイド』フリーダ・マクファデン|★5
仕事も住む場所も必要としていたミリーが手にした、裕福な家庭でのハウスメイドの仕事。
しかし、雇われた家には奇妙な妻や牢屋のような部屋があり、次第に「何かがおかしい」ことが見えてきます。
これはもう、とにかく先が気になる。
海外ミステリーは少し構えてしまうこともあるのですが、『ハウスメイド』はどんどん読めました。
何を信じていいのかわからない状況が続いて、ページをめくる手が止まらない。
「続きが気になって一気読みできる本が読みたい」というときに、かなりおすすめしたい作品です。
そして読了後、当然のように2作目へ。
『ハウスメイド2 ―死を招く秘密―』フリーダ・マクファデン|★5
シリーズ第2作。
新たにギャリック家で働くことになったミリーには、「ゲストルームには入らないこと」というルールが課されます。
しかし、閉ざされた部屋の向こうから聞こえてくる声や、家の中で見つけたものから、再び不穏な出来事に巻き込まれていきます。
1作目をかなり楽しんだので、続けて読んだ2作目。
シリーズになってもこの読みやすさと先が気になる感じは健在でした。
1作目を読んだからこそ、「今度はどうなる?」と思いながら読めるのも楽しい。
『ハウスメイド』が気に入ったなら、そのまま続けて読んでほしいです。
『砂の王国』荻原浩|★4.5
大手証券会社勤務からホームレスへ転落し、全財産はわずか3円。
そんな主人公が公園で出会った二人とともに思いついたのが、新興宗教を自分たちで作ることでした。
今回選んだ中では唯一の上下巻。上巻は★5、下巻は★4をつけました。
上下巻合わせてかなりのボリュームがあるのに、完全に物語にのめり込んで、そのまま一気に読んでしまいました。
ホームレス生活から始まり、何もないところから少しずつ巨大なものを作り上げていく過程がとにかく面白い。
やがて作り出したものが本人たちの思惑を越えて膨らんでいく展開にも引き込まれました。
正直にいうと、結末には少しだけ不満が残りました。
でも、「あれだけ夢中になって読んだ」という読書体験まで含めれば、間違いなくこの夏に読んでよかった作品のひとつです。
7・8月に読んだ本は全18作品
7月・8月は、今回紹介した10作品以外にもいろいろ読みました。
★5がかなり多く、振り返ってみると本当に当たりの多かった夏。
ここにはおすすめ10選に入れなかった作品も含め、7・8月に読んだ本をまとめておきます。
| 作品名 | 著者 |
|---|---|
| 『山上のフェイク』 | 潮谷験 |
| 『嘘つきは人間のはじまり』 | 真梨幸子 |
| 『そこに、君の死体が埋まっている』 | 星来香文子 |
| 『楽園』 | 夕木春央 |
| 『殺し屋の出世術』 | 野宮有 |
| 『殺し屋の営業術』 | 野宮有 |
| 『かわりに嘘』 | 鈴木七月 |
| 『失失失楽園殺し』 | 森晶麿 |
| 『少年ABCの完璧な選択』 | 結城真一郎 |
| 『硝子のマンション』 | 染井為人 |
| 『「石球城」殺人事件』 | 北山猛邦 |
| 『刑事葛城 正義の銃弾』 | 中山七里 |
| 『シュレディンガーの密室』 | 麻根重次 |
| 『砂の王国』上巻 | 荻原浩 |
| 『砂の王国』下巻 | 荻原浩 |
| 『ハウスメイド2 死を招く秘密』 | フリーダ・マクファデン |
| 『ハウスメイド』 | フリーダ・マクファデン |
| 『海月の骨』 | 朝宮夕 |
9月は『ふしぎな凶器博物館』からスタート
そして9月に入って現在読んでいるのが、9月2日発売の『ふしぎな凶器博物館』。
まだ読了前なので評価はつけませんが、今のところかなり面白いです。
9月も気になる新刊がたくさんあるので、また面白い作品に出会えるのが楽しみです。
まとめ|当たり作品の多い夏でした
7月・8月に読んだ18冊から、特によかった10作品を紹介しました。
中でも『「石球城」殺人事件』は、今のところ今年No.1。
一方で、上下巻を一気読みした『砂の王国』、新刊の『少年ABCの完璧な選択』『楽園』『シュレディンガーの密室』、一気にシリーズ2冊を読んだ『ハウスメイド』など、それぞれ違った面白さのある作品に出会えた2か月でした。
気になる作品があれば、ぜひ読んでみてください。

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