第72回江戸川乱歩賞の受賞作が、箕輪尊文さんの『天使の負託――エンジェル・バレット――』に決定しました。
江戸川乱歩賞は、ミステリー作家の登竜門として知られる新人賞です。東野圭吾さん、桐野夏生さん、高野和明さん、道尾秀介さんなど、多くの人気作家を輩出してきました。
この記事では、第72回江戸川乱歩賞の受賞作『天使の負託――エンジェル・バレット――』のあらすじ、審査員が評価したポイント、箕輪尊文さんについて、最終候補作、今後の発売情報をまとめます。
※第72回江戸川乱歩賞の受賞時タイトルは『天使の負託――エンジェル・バレット――』でしたが、刊行にあたり『弾丸とヒマワリ』へ改題されました。2026年9月9日に講談社より発売予定です。
『弾丸とヒマワリ』のあらすじ
※受賞時のタイトルは『天使の負託――エンジェル・バレット――』でしたが、刊行にあたり『弾丸とヒマワリ』へ改題されています。
女子高生が自宅で銃殺され、その手には、PKOに参加した自衛隊員へ授与された名誉のメダルが握られていました。
重要参考人として警察にマークされたのは、元自衛隊員で、現在はピザ屋の配達員として働く本庄恵梨香。
一方、恵梨香と同じ戦地でのトラウマから自衛隊を退官し、薬物の売人となった野島武のもとには、「人を殺せるクスリ」を求める元地下アイドル・南川杏子が現れます。
戦地での過去を抱える人物たちと、現在起きている事件が交錯していく、第72回江戸川乱歩賞受賞作です。
審査員が評価したポイント
受賞発表会見で特に強調されていたのは、自衛官の世界のリアリティでした。
『天使の負託――エンジェル・バレット――』は、PKO派遣の過去を抱える元自衛官たちを描く作品です。審査員からは、自衛官の世界が非常によく描かれていること、まるで実体験かのようなリアリティが評価されていました。
また、ミステリーとしての仕掛けや、「国連メダルを持っている」という謎の効かせ方も評価ポイントとして挙げられていました。女子高生殺人事件の現場に、なぜPKO派遣時の国連メダルが残されていたのか。この一点だけでも、かなり引きがあります。
選考では、最初から意見が一致していたわけではなかったようです。
それでも最終的には、審査員5人全員一致と言ってもよい結果になったとのこと。
欠点はあるものの、作品としてよくできていたこと、そして頭で考えただけでは出せないリアリティが、評価につながったようです。
自衛隊、PKO、国連メダル、女子高生殺人事件。重い題材を扱いながらも、物語の手触りに説得力がある受賞作といえそうです。
箕輪尊文さんはどんな人?
箕輪尊文さんは、今回が初めての最終候補ではありません。
会見では、第65回で初めて江戸川乱歩賞の最終選考に残り、第67回でも最終候補になったと語られていました。そして今回、第72回で再び最終候補となり、ついに受賞に至ります。
江戸川乱歩賞には、第63回からほぼ毎年応募していたとのこと。
10年間挑戦を続けられた理由として挙げていたのは、書くこと、考えることの楽しさでした。苦労はありながらも、先輩作家たちの作品を読み、「今度こそは」と書き続けてきた。会見からは、そんな10年の積み重ねが伝わってきました。
なかでも印象的だったのが、「登るなら一番高い山を登りたい」という言葉です。
ミステリー作家の登竜門として知られる江戸川乱歩賞。その賞に挑み続け、何度も最終候補に残りながら、10年越しで受賞する。
会見では、受賞について「これから本当の試練が始まる」とし、「身が引き締まる思いです」と語っていました。
南スーダンPKOから生まれた物語
『天使の負託――エンジェル・バレット――』の着想には、南スーダンPKOがあったそうです。
会見で箕輪さんは、南スーダンPKOについて、最初は「よくわからない」という印象だったと語っていました。けれど、「これは小説になるかもしれない」と感じ、調べ始めたそうです。
そこから、自衛隊についてもネットや本で調べながら、物語を形にしていったとのこと。
遠くのニュースとして通り過ぎてしまいがちな出来事を、元自衛官たちの過去と現在の殺人事件へつなげていく。自衛隊、PKO、過去の隠蔽、そして女子高生殺人事件。題材の重さとミステリーとしての引きが重なった作品になりそうです。
また、箕輪さんは今後について、ミステリーに限らず小説を書いていきたいとも語っていました。社会に対して上から何かを示すのではなく、「一緒に考えてみませんか」というような作品を書きたいという言葉も印象的でした。
第72回江戸川乱歩賞の最終候補作
第72回江戸川乱歩賞の最終候補作は、以下の4作です。
| 作品名 | 著者 |
|---|---|
| 贖罪に手を汚す | 卯上笹生 |
| 家族毒 | 桑原なつみ |
| Monju | 平野尚紀 |
| 天使の負託――エンジェル・バレット―― | 箕輪尊文 |
最終候補作のタイトルを見るだけでも、罪、家族、謎めいた固有名、そして天使と銃弾のような不穏な響きが並んでいます。
『弾丸とヒマワリ』は9月9日発売
第72回江戸川乱歩賞受賞作は、受賞時の『天使の負託――エンジェル・バレット――』から『弾丸とヒマワリ』へ改題され、2026年9月9日に講談社より発売されます。
単行本は定価2,200円(税込)、304ページ。すでに書影や書誌情報も公開されています。
受賞発表時から気になっていた方は、刊行タイトルが変わっているので間違えないようチェックしてみてください。
江戸川乱歩賞が気になった人におすすめの歴代受賞作
第72回の受賞作が気になった方は、過去の江戸川乱歩賞受賞作を読んでみるのもおすすめです。
江戸川乱歩賞には、今も読み継がれている名作が多くあります。
『殺し屋の営業術』野宮有
第71回江戸川乱歩賞受賞作。
凄腕営業マンが「殺し屋」の営業をするという、かなり異色の設定のクライム・ノベルです。
第72回の受賞作『天使の負託――エンジェル・バレット――』を待つあいだに、まずは直近の乱歩賞受賞作から読んでみるのもおすすめです。
『13階段』高野和明
死刑制度を題材にした社会派ミステリー。
重いテーマを扱いながらも、物語としての読みやすさと緊張感があり、江戸川乱歩賞受賞作の中でも特におすすめしやすい作品です。
『カラスの親指』道尾秀介
詐欺師たちを描いたエンタメ性の高いミステリー。
重すぎる作品よりも、物語としてぐいぐい読める乱歩賞受賞作を探している人におすすめです。
『カラスの親指』の続編や読む順番はこちらで紹介しています。

『放課後』東野圭吾
東野圭吾さんのデビュー作。
学園を舞台にしたミステリーで、江戸川乱歩賞受賞作としても有名な一冊です。東野圭吾作品をこれから読みたい人にも手に取りやすい作品です。
『顔に降りかかる雨』桐野夏生
桐野夏生さんのデビュー作。
ハードボイルド寄りの空気があり、女性主人公のミステリーとしても印象に残る一冊です。
まとめ
第72回江戸川乱歩賞の受賞作は、箕輪尊文さんの『天使の負託――エンジェル・バレット――』です。
刊行にあたりタイトルは『弾丸とヒマワリ』へ改題され、2026年9月9日に講談社より発売予定です。
受賞時から気になっていた方は、発売時のタイトルが変わっているのでチェックしてみてください。
江戸川乱歩賞受賞作として、どんな作品に仕上がっているのか楽しみです。

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